デザインの秋!インテリアイベントの思い出
9月のロンドンと言えば、日々秋への移り変わりを感じる頃です。
秋と言えばアート!ロンドンは1年中アートを楽しめる都市ですが、この9月は特に盛り上がります。ロンドンデザインフェスティバルというデザインの祭典があるからです。
今年で17回目になるロンドンデザインフェスティバル。
ロンドンの街はエリアでその個性がだいぶ変わるのですが、各エリア毎に様々なイベントが開催されます。
それに加えて、Focus, 100%Design, London Design Fair 等のデザインの展示会も開催され、見所たくさんの時期なのでした。
今回は、その中でプロ向けハイエンドインテリアの展示会であるFocus、そしてその3週間後に開催されたDecorexの様子を中心に思い出を綴りたいと思います。この展示会は基本的にインテリアデザイナーやショップのバイヤーなどプロ向けなのでここでの販売はありませんが、一般の方が見られるパブリックデーもあります。
去年まではDecorexもこのロンドンデザインフェスティバル期間中に開催されていたんですが、今年から時期が3週間ずれてこちらは10月初旬になりました。
さて、FocusはDesign Centreという100以上のショールームが集まる場所で開催されるイベントです。このショールーム自体は常設なので日常的に行きますが、この期間中の見所は何と言ってもそのディスプレイ!
圧巻の吹き抜けを利用したインスタレーションではトレンドを意識した色柄が見られます。
また各ショールームでは新作発表が行われたり、様々なイベントで賑わっています。
ここをひとつずつ回ったら1日でも回りきれないのですが、今回は新しくできたばかりのウィリアムモリスのショールームをご紹介します。
モリスの壁紙、ファブリックを使用したディスプレイの中央でパチリ。
モリスの世界に入り込んだみたいです。
こちらは昔ながらの印刷方法、ブロックプリントでの実演。
大きな木版画に塗料をつけて、その後紙に押します。
当時のウィリアムモリスの工場はロンドン南西部のMerton Abbeyというところにあり、実はうちの近所なのです。
工場跡地は、William Morrisという名前のパブになっています。全然Morrisがアピールされていないパブで残念ですが、歴史を知っていると感慨深い場所です。(参考:以前のブログ記事 ”ウィリアムモリスの工場跡地へのお散歩”)
今年らしいピンク色を生かしたこんなディスプレイも。
モリスの”Strawberry Thief" (いちご泥棒)のパターンは大人気ですね。Kelmscott Manorの庭からインスピレーションを得て作られたパターンで、このファブリックはKelmscott Manorのインテリアでも使われていました。
私、去年ウィリアムモリスを巡る旅をしたのです。モリスは自邸の庭など、生活の近くにある自然をモチーフにして、多くのデザインを作っています。それらのデザインの舞台になった場所を見られたことで、モリスのデザインをより身近に感じるようになりました。
その時の思い出が蘇って、この展示はとても楽しかったです。
(ブログ記事 ”ウィリアムモリスを巡る旅” )
それとこのFOCUSで見つけたのは、憧れのデザイナーKit Kempの特設ブース。
一目で彼女のデザインとわかる、個性的なデザイン。いいですね。
元々彼女のデザインは大好きでしたが、そのデザインは多くのビンテージやアンティーク品の再活用、伝統工芸品の利用、アーティストとのコラボレーションなど高いサステイナビリティを維持したものでもあると知り、ますます大好きになりました。
サスティナビリティやエコというと、そのためにデザイン性が落ちても仕方ないという時期があったようですが、彼女はデザインとサスティナビリティを見事に両立させた成功例なのです。
それと、彼女はFINE CELL WORKという組織へデザイン提供もしています。ここは刑務所の囚人に社会復帰のために刺繍技術を訓練し、高いデザイン性のものを販売することで元囚人の再犯率を抑えているのです。この組織を知ったのは2016年のDecorexでしたが、とても感動して当時のブログに書いたのでした。(ブログ記事:刑務所発?! デザインの力で人生を変える。インテリア展示会2 Decorex)
今年3月のFocusの時は彼女のトークイベントに参加し、出版したての本にサインまで頂いたのが良い思い出です。きさくでとても素敵な方でした。本当に一流のプロはその人柄が素晴らしくて、器の大きさを感じます。(ブログ記事:世界的インテリアデザイナーのトークを聞いて感じたこと)
さて、Focusから3週間後には、ハイエンドのインテリアアイテムが揃うプロ向けのインテリア展示会Decorexへ行きました。
去年9月はパリのインテリア展示会のメゾンエオブジェとこのDecorexの両方へ行くと同じサプライヤーも多く見かけました。でも、今年はメゾンエオブジェではあまりイギリスのサプライヤーを見かけなかったのです。
その分か、Decorexではイギリスのサプライヤーによる”British” らしさがたくさん見られました気がします。
それは、”自然”を感じさせるデザインです。
展示会場中央部のカフェの様子、English Gardenと名前がついていました。
イギリスでは、裕福な人ほど自然の多い郊外や田舎に住むと聞いたことがあります。
私も最初にイギリスに来た頃にコッツウォルズに数ヶ月滞在したことがあり、その日々で人生観が変わりました。のんびりした時の流れの中に成熟した豊かさがあり、とても居心地の良い場所でした。
今はロンドン暮らしですが、それでも自然が近いですね。
日々の暮らしで鳥のさえずりが聞こえたり、きつねに出会えたり、そんな時はささやかな幸せを感じます。
このDecorexでは素敵なアイテムにたくさん出会えます。何しろ400以上のサプライヤーが出展しているのです。
ここはイギリスマーケットをターゲットにしたサプライヤーが多いので、イギリスでの実際のプロジェクトでとても使いやすいのです。それと共に日本に送って日本のプロジェクトで使うこともあります。
すでに馴染みのサプライヤーのブースでは、納品した現場の話をしたら担当の方が喜んでくれました。それと新作のチェックも欠かせません。
加えて、新しいサプライヤーとの出会いも楽しみです。毎年行っていると例年との比較もできるので、トレンドの移り変わりも見えて、気づくこともたくさんあります。
イギリスのハイエンドインテリアでは、オーダーに対応して制作する”ビスポーク”が基本です。
その逆にあるのが、”ハイストリート”アイテム。良く売れやすいデザインを素材を変えたり大量生産にして手頃な価格にして普及品としたもので、街で良く見るインテリアアイテムになります。
ハイエンド、となるとこだわりの品です。一般普及品より手触りも良く、美しく、使い勝手もよく、そしてこだわりのインテリアにぴったり合わせたオーダー品。まるでオーダーのお洋服のようなものでしょうか。自分の好みやサイズに合わせて作るのです。もちろん価格は高くなりますが、その分毎日幸せを感じながら長く使えるとしたら、いいですよね。
写真下の方にあるのは、ラグの色見本。
ラグもパターン、色、サイズを指定してオーダーします。
デザインはいいけどサイズがない。サイズが合うけどデザインが合わない。
インテリアをデザインする時に、置く場所に合わせてデザインを作り、サイズを割り出して、mm単位でそのままオーダーするというのに最初は驚きましたが、インテリアに合わせてアイテムを作るビスポークならではですね。
他にもこんなラグも!まるでアートのようです。
家具はシンプルでも、このラグひとつでインテリアががらりと変わりますね。
色は一色でも、形やパターンで遊べます。
その他、淡いかわいらしいファブリックが素敵なブースでは、アンティークチェアに生地を張ったディスプレイも。歴史ある家具はこうして次の世代に受け継がれていくんですね。かつてアポストリーという椅子の張り替えを少し習っていた私。イスにはつい見入ってしまうのです。
下のソファ、クッションが多くて座る場所がありません。笑 ディスプレイにはいいですよね。
座面、クッション、トリムの色と柄がコーディネートされているのがいいですね。
緑、青、白の爽やかな組み合わせに、ピンクの差し色が素敵です。
次は背中で語る椅子達。
背中で語る椅子、その2。
壁のアートとコーディネートされています。
後ろ姿の美しいイス、大好きです。
ドアハンドルなどIronmongery と呼ばれるハードウェアは、種類が豊富です。さすがビスポークの国ですね。
チェストのハンドル一つを変えるだけでも、雰囲気はがらりと変わるのです。
そのIronmongeryを用いて描かれたのは、、、ブリテン島の形!
別の展示会、100%Designの時でしたが、外に面白いディスプレイがあったのでご紹介します。
何と、地下鉄の車両のインテリアを今年色に模様替え!
明るい色とポップなデザインが特徴的なKirkby Designのベルベッドが使われています。
下は一般車両。これが毎日の通勤電車だったら楽しくなりそうですね。上にある路線図の色も揃っています。
こちらの特別車両で記念撮影。優雅なチューブの旅?になりそうです。
今年は今までになく、イギリスらしさを強く感じさせる展示会でした。
それも、どこか懐かしい古き良きイギリスの面影を感じさせるような。
数週間後に迫ったBlexitの後、この国は一体どうなっていくのでしょう。
歴史に残る大変革期の渦中に、それでも淡々と日々を過ごしているのが不思議です。
来年のロンドンデザインウィークの頃はどうなっているのでしょうか。
今は自分にできることをしながら、この国の行方を見守っていきたいと思います。
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