イギリスに来た欄間の物語
先日納めさせて頂いた、欄間入りウォールユニットのデザイン秘話?です。
ご存知の通り、欄間とは和室に使われる建築部材です。
(下の写真の赤丸の部分です)
最近の日本では和室も少なくなり、欄間のあるお部屋も珍しいのかもしれません。今回は、その欄間が海が渡ってイギリスまでやってきて、新しい居場所を見つけるまでのお話です。
(Source: http://www.kirakuan.com/2kainaibu.htm)
こちらのお客様に初めてお会いした時、私が過去にした現場のお話をしていました。
”日本らしいものをロンドンの家に使う”ということで、北斎の壁紙を使った現場でした。
詳細はこちら
そこに”ピッ”と来られたようで、インテリアのお手伝いをさせて頂くことになりました。
実は別のデザイナーの方が入っていたけれど、具合が悪くなってしまい続けられなくなってしまった、という状態。 すでにいくつかの家具は決まっていました。
まだ決まっていないカーテンに、
リビングのフォーカルポイントとなるウォールユニットのお手伝いをさせて頂きました。
まずは、お手持ちの家具と、これから購入予定の新しい家具を見せて頂きました。
新しいフラット(日本で言うマンション)にぴったりのモノトーンのモダンな家具を購入済。
それに、日本からお持ちになったと言う、とても素敵な階段だんすや、味わい深い多くの日本の古家具がありました。
その中に、欄間がひとつ。
以前は壁に飾っていたという欄間。今は使い道がなく、考え中とのことでした。
海を渡り、はるばるやってきた歴史ある美しいものです。
日本の素晴らしい職人技がとても魅力的です。
”せっかくオリジナルで作るのですがから、欄間を組み込んだ、ウォールユニットにしませんか?”
とご提案。
このお部屋では、ウォールユニットは、リビングルームのフォーカルポイントになる存在です。
このお部屋にある、
”新しいものと、古いもの”
”イギリスと、日本”
という、一見遠いところにあるようなもの達が、この欄間の入ったウォールユニットで繋がり、
空間全体をひとつにまとめる存在になって欲しいと思ったのです。
”時間”を縦軸に、”場所”を横軸に、図にするとこのような感じです。
同じく海を渡り日本から移住されたお客様も、そのアイデアを気に入って下さり、デザインが始まりました。
まずは、収納したいものと、そのサイズのヒアリングに始まり、ラフスケッチを用意。
新しく買うテレビのサイズも、もちろん考慮。
こうすることで無駄がなく、使いやすい収納が作れます。
日本的な雰囲気を表すためにも、全体としてアシンメトリー(左右非対称)の構成にしました。
色は、同じ空間にある既に決まっている家具や内装に合わせて、”運命の一色”を選びます。
この色見本を広げている時の私は、まるで占い師の様。笑
それをお客様への説明用に簡単な3Dにしました。実際の壁面と天井のサイズとスケールを合わせると、プロポーションもわかります。
最終的には、家具職人さんが製作用の図面を用意してくれますので、それをチェックして製作開始になります。
扉はシンプルなシェーカースタイルにして、内側に壁紙を張り込み、取手は日本から取り寄せ、和の雰囲気を添えることに。
日本からはるばるやってきた取手を、職人さんに送る前にこっそり(?)合わせてみると。。。
アクセントに使う壁紙と取手のメタリックの相性がとても良く、ペイントカラーともいい雰囲気です。
仕上がりが楽しみです!!
そして、ついに納品の日。
細部までとても精度の高い仕上がりで、素晴らしいウォールユニットが出来上がりました。
(写真が私の撮影なのが、残念ですが。。)
新しいテレビはこれから来るので、そうするともっと収まり良く見えるでしょう。
他の日本の骨董家具も入った空間全体の写真の方がもっと素敵に見えるのですが、それは個別でお見せするとして。。
扉を開けるとこのようになっています。
”何をどれだけ、どのように収納するか” に合わせて、それぞれのサイズを決めました。
”とりあえず” 収納を作っても、高さや奥行きが合わなければ、結局役に立たないのです。
収納を増やしたい、というのが最初のリクエストだったので、今回は基本的に”しまう”収納がメイン。
それに少しのディスプレイエリア。
きれいに見せるには入れられる量が限られるので、しまう部分と見せる部分は分けて考えました。
日本から取り寄せた金具が、モダンな中にも日本的な雰囲気を添えています。
ハンドルなどのハードウェアは、ファッションで言うところのアクセサリーだといつも思います。
それが添えられると、全体がキュッと引き締まる感じがします。
実は収まるまで、欄間入りのウォールユニットがどうなるか不安、だったとおっしゃるお客様。
海を渡った思い入れのある欄間も、新しい居場所に収まり、
お手持ちの花瓶や置物を飾り始めると、
”ずっと前からあったかのように、他の家具とも馴染んでいる”と喜んで頂けました。
私としても、同じく海を渡りイギリスに暮らす日本人として、(また余談ですが、私は”洋子”のせいか?特に海に思入れがあり)
”日本とイギリスを、インテリアでつなぐ”
というのは、自分にとってテーマです。
単にモノだけを持ってきて空間に置いても、それを上手く馴染ませていくのは難しいと感じます。
イギリスと日本では、住宅のプロポーションや、光など、違うことがとても多いのです。
最初に願った通りに、
”新しいものと、古いもの”
”イギリスと、日本”
がつながり、
見て心地良いのはもちろんのこと、実際の生活の中でも使いやすいものとして、
この欄間の入ったウォールユニットが、特別な存在になってくれたらと願っています。
まだお引越し直後でお忙しいようですが、これから少しずつ成熟したインテリアになっていくことでしょう。
また伺える日が今から楽しみです。
תגובות