地球の裏側から住まいづくり10)台風到来?のような打合せ
(写真は、ショールームで畳コーナーを体験する父。小さくなりますが、うちにもこんなスペースを作る予定です)
お願いする建築家が決まった後は、コンセプトに基づき間取りやスタイルの方向性の打合せを行いました。
私がロンドンにいる間は、遠距離ながらもメールにスカイプで行います。
最近はインターネットのおかげで、打合せやリサーチなどは場所に関わらずしやすくなりました。特にロンドンで私の周りにいる方々はそういったテクノロジーを存分に活用している方々が多いので私にとっても日常なのですが、うちの両親は全く…と言える程使えません。
東京でお願いしている建築家の先生は両親と同い年にも関わらず、普通にメールやオンラインでコミュニケーションが取れるので、それは何とか進められるものの、そんなうちの両親とはやはり私が東京にいないと打合せがなかなか進みづらい。。でも両親は私に「おまかせ〜」状態なので、本人達は至ってのんきです。
とは言え、設備や内装は住む本人達に、実際に見て確認してもらわなくてはいけません。
私の一時帰国中は、夏らしく「ハリケーンようこ襲来」の如く、でした。
連日連夜の家族会議に、建築家の先生との打合せ、ショールームにて実物を確認して決定!が続きます。
今まで気にも止めていなかったような、近所の外壁の種類や色、玄関ドア、外構照明なども急に気になり始め、ご近所探索だけでも結構気付きはあったりします。何と最終日は「今しかない!」と深夜にまで及ぶ打合せ。
間もなく70代のうちの両親、建築家の先生には体力的に厳しかったと思います。しかも季節は夏でした。日に日に暑さは増して行きます。
暑いのは外だけでなく、家族会議まで。笑
ヒートアップした挙句に度々ケンカに発展しつつ、このまま争いに発展?! どうなることやら…という瞬間も多々ありました。
でもショールーム巡りとは言え、こんなに多く家族で出かけるのは久しぶり。実は両親は職場結婚?だったらしく、その職場があったという中野坂上から西新宿の変貌ぶりを前に、昔話に話が咲いたり。まだまだ大変なんですが、そんな時間もいい思い出になればいいなぁと願うばかりです。
私自身も今回は、「施主家族兼デザイナー」という立場で改めて多くのショールームを巡り、今までとは違う新しい気付きがたくさんありました。
そんな様子を次回で少々ご紹介したいと思います。
仕事柄、今までインテリアのショップやショールームは日常的に訪ねていますし、見つけると時間のある限りいつも立ち寄ります。
何を隠そう?私自身かつては東京とバンクーバーのキッチン&バスのショールームで働いていたこともあるので、その内部事情も少々わかります。笑 なつかしいなぁ。
今回も東京に戻る直前に、ロンドンでキッチンリノベーションをしたばかりだったので、その際にもキッチンキャビネット、タイルに始まり、カウンタートップのスラブまでを見にあちらこちら行きました。
思えば、いろんな国のいろんなショールームに行っています。一般の人が訪れるきれいなところから、工業地帯の一角にあるショールームと言い難い工場のようなところまで。笑 ちなみに確実に言えるのは、サービスに関しては日本は最高!こんなに整理整頓されて丁寧なところが揃っているのは日本だけで、そういうサービスの質の高さはやはり世界に誇れる日本の素晴らしさです。
さて、今回が今までと違うのは、私は単に「デザイナー」というだけでなく「施主家族」であるという点。
基本的には「両親の家」で私が一緒に住むわけではないのですが、東京では私のベースになるのでロフトくらいは隠れ家にしようと、密かに企んでます。
今回は住宅のスケルトンリノベーションなので内装以外のショールームにも多く行きました。せっかくなのでイギリスから運ぼうかと思って方法も調べてあったんですが、うちの両親は基本的に「和で自然素材な家」にしたいので、日本のものをメインに使うことにしました。
今回訪ねたショールームは、過去に行ったのあるところから今回初めてのところまで様々。
最初に自分が行きその中から選んで両親を連れて行きました。それは普段クライエントの方をお連れするのを同じなんですが、何しろうちの両親はもうすぐ70代なので、それも考慮したシニア仕様のショールームツアーにしないと行けません。
近い距離でもこの暑さで歩くと体力の消耗が激しく、ショールームで見る事に集中できないので、タクシー移動や休憩を組み込みルート設定し、時間を想定してアポをとります。その上、うちの母は食事にうるさいのでランチの場所も考慮したり。なので行く本人達は、”次はどこ〜?!”と、まるでツアーに行く感じ。笑
余談ですが、いくつかのショールームを訪ねた際は「施主家族です」として行きました。
せっかくなので「お客様目線」で接客されるのも参考になるかと思ったのです。
でも打合せの最初に簡単に概要を先方に説明して、その後も両親相手にいろいろ補足説明していると、だいたいバレます。笑
ショールームやショップでもインテリアの相談やちょっとしたプランは作ってもらえたりします。
でもコンセプトをベースにデザインを組み立てて、それを発展させ、全体のバランスを取りながら空間に仕上げて行く、というのはやはりインテリアデザイナーの仕事で、施主の立場にいるからできることだと改めて感じました。
全体の予算内で、使うべきところに使い、減らせるところは調整する。
そんなさじ加減は本当に難しく、使う人の価値観や使い方によります。
それと機能面に関しても、一見素晴らしい機能でも、必ずしも万人に便利なわけではない、とも実感。
引き出せば一度に見渡せるキッチンキャビネットの引き出し。
私は便利だと思いましたが確かにうちの母には少し重い。ソフトクローサーが付いていれば代わりに引き出すのも少し重い。
人気の見た目すっきりなハンドルの無い家具扉は、指先に力が入りづらいと開けにくい。私には何気ないことだけれど、確かにその通りだと実感。。うちの母には「それは若い人向けなのよ」と度々言われました。
日本の設備は多機能で致せり尽くせりで、カタログも商品展開も、とてもシステムとしてよく出来ていると感心しつつも、そうでない国で暮らす私には、かつては当然だったけれど、一歩引いて見ると違う見方もできます。
いつの間にか自分の視点や反応が、かつての自分にとっては新鮮だった外国人の反応に近くて、そんな気づきも不思議です。
ちなみに今回も日本に到着するなり、なぜか自販機とコンビニに感動してしまったし。笑
その他にも今回は、それが家の中で家族と共にどう変化していくのだろう、としみじみと思うことが多々ありました。
やはり「施主家族」として、自分達のこれからを具体的に考えてこそ見えることがあります。
新しい家での生活とは言え、全てが新しく…というのも、シニア世代の両親にはそぐわない気がしました。
思い入れのある家具やモノだってそれなりにあるし、今まで築いてきた生活習慣が大きく変わり過ぎるのもむしろ不便です。
なので、改善したいところを覗いてはなるべく同じように暮らせるようにしました。例えばキッチンのシンクが右でコンロが左とか、今のキッチンのどこをどう使っているかを研究したり。
うちはいくつかの思い入れのある家具が新しい家に行くので、それに馴染む空間になることも必要です。
思えばロンドンの生活でいつも新旧ミックスしたものに囲まれているので、そういう「古いものと新しいものをつなぐ」というのがとても自然に思えます。
プロジェクトの最初にいつもテーマを決めるんですが、これは「つながる家」にしたのです。
家族と住むマイホームを持った兄家族、独立し地球の裏側に来てしまった私、今までもこれからもお世話になるご近所の方々、場所と時間を越えて、この家でもう一度つながるといいなと思っています。
思いがけず訪れた「終の棲家づくり」。
母にはいつも「私が戻ると慌ただし過ぎて具合が悪くなる」と言われつつも、帰りには「次はいつ来るの?」と言われてます。
地球の裏側から来たハリケーン洋子に今はバタバタなのですが、「新しい家で、共に時の流れを楽しめるモノたち」に、ぜひ出会って欲しいと思います。
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