スタンデンハウス:ウィリアムモリスを巡る旅3
スタンデンハウス(Standen House) はレッドハウスと同じ建築家フィリップ ウェブが建物と内装をデザインした家です。彼のモットーであるクラフトマンシップとその土地で取れる素材の良さが際立ち、そこにモリス商会デザインのファブリック、壁紙、家具が見事に融合しています。
車でロンドンから南東へ約1時間半程のウエストサセックス(West Sussex) の緑豊かな小高い丘の上に建っています。
この家は、裕福なソリシターと彼らの7人の子供達のために1892-1894年に建てられた家で、
現在はレッドハウス同様、ナショナルトラストが管理しています。
Standen House Website (英語)はこちら
ここはレッドハウスとは対照的に、建てられてから1つのファミリーによって受け継がれ、住み継がれた家です。そのため、当時からの内装や調度品の多くがそのまま残っています。100年以上前にデザインされたとは思えないほど、古びた感じは全くなく、素敵に年を重ねた成熟さが滲み出たとても居心地のいい雰囲気です。
実はここを訪ねるのは2度目。
1度目はレッドハウスを午前中に尋ねた後にその足で駆けつけるも、慌ただしく見るだけで終わってしまいました。。。
それから1ヶ月程たち、紅葉も深まった10月中旬、ついに1日かけてゆっくりとこの家と周囲の庭を満喫することができました。
今回はほんの少しですが、そんなスタンデンハウスをご紹介したいと思います。
この日も着くなり、まずはランチ。笑
昔のバーン(納屋、家畜小屋)を改装したカフェ、ここの雰囲気もなかなか良いのです。
腹ごしらえをしたら、いよいよおうちへ!
玄関をくぐると、ホールにあるイスの後ろ姿にドキッ!
モリスのファブリックWILLOW BOUGHSにテンションが上がります。(私だけ?)
その先にあるのは、ビリヤードのお部屋。
男性たちが食事の後に、語らいの時を持つメンズのお部屋、という感じでしょうか。
賑やかな話し声が聞こえてきそうです。
この部屋の壁にかけられたタイル、
ウィリアムモリスと親交も深かった同時期のアーティスト、ウィリアム·ド·モーガンのタイルです。
このタイルはマートンアビーというモリスの工場で作られたそうです。何とマートンアビーはうちの近所で、その工場跡地はかつてウィリアムモリスという名のパブでした。(マートンアビーについての記事はこちら)
ビリヤードルームを抜けると、体重計?!
それより壁紙に注目です。これは、トレリスという柄で、モリスが1862年に発表したデザインですが、このインスピレーションはレッドハウスの庭から来たそうです。(レッドハウスを訪ねた時の記事はこちら)
コンサバトリーで少し腰を下ろします。先は長い!
とても素敵な雰囲気のドローイングルーム。客間およびフォーマルなリビングルームです。
この家全体に言えることですが、小物の作り込みまで本当に良くできていて、まるで当時の生活をそのまま再現しているかのようです。
他の、2階のベッドルームやダイニングルームや廊下に至るまで、その全てがモリスの世界観でいっぱいです!
モリスのアイテムでコーディネートされた空間は、何とも言えない特別な空気感を持っています。
まさしく、モリスによるトータルコーディネートの妙としか言えません。
ファブリック、壁紙、小物、それぞれのアイテムに個性があるのに、それらが合わさった時に引き立て合い、共に使われることでよりその良さが増す。優しく包まれるようでいて、ひとつひとつに面白みがある。
モリスマジックとしか思えません。
ロンドンから足を伸ばして日帰りできるこの場所は、ぜひモリスファンに体感して欲しい場所だと思います。
モリス商会デザインの壁紙、ファブリックはもちろんのこと、壁の装飾品や、テーブル状の飾り等も当時の生活の様子を表していて、とても興味深いです。
家を十分に満喫した後はお庭へ。
家の周りには広大な敷地があり、訪ねた時はちょうど紅葉もきれいでした。
かわいいアルパカちゃんもいたりして。
この家は、幸いにして一つのファミリーに受け継がれ、当時の暮らしぶりを残すことができました。
この家を受け継いでいたオーナーは、この貴重なアーツアンドクラフトの家がこれからもずっと残るようにと、1970年代最初にナショナルトラストに寄付したそうです。
そのおかげで、こうして私もこの素晴らしい家を体験することができています。こうして実際に訪ね、楽しく時間を過ごしながら理解を深めることもまたサポートにつながるので、これからも楽しく続けていきたいと思います。
他のウィリアムモリスを巡る旅は、以下からリンク先へジャンプします。